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楊貴妃 3 

私が物心ついたときには、父上と母上はこの世にいなかった。母上は私を産む際に息絶え、父上はそれから数年後に母上の名前を叫び、半狂乱になりながら竹林へ姿を消したと聞いた。私がこの話を聞かされたのは三年前、当時私は十歳になったばかりで、婆やが話す「竹林に虎が出る」という噂に怯えて暮らしていたときの事だった。父上と母上の話をした婆やのあのときの何とも言えない表情を、私は今でも覚えている。

寒々とした夜空の下、そんな昔話を思い出しながら、私は目の前で焚かれた焚き火に手を翳す。赫々と燃える火はこれから始まる「成人の儀」への不安を消し去っていくようで、私の心は落ち着きを取り戻し始めていた。揺らめく炎の暖かさは、どこか婆やを彷彿とさせる。あの暖かな婆やのぬくもりを、私は思い出し始めていた。


婆やは私を育ててくれた唯一の家族だった。三年前、私に家族のことや、色々なことを教えてくれた婆やは、枕元で最後まで笑って息を引き取った。不治の病だった。何度も吐血していたのを覚えている。呼吸すらままならないときでも…それでも…婆やは笑っていた。人生を終える時は、ああも幸せな表情ができるのだろうか。あんな風に私も…婆やのように満足して生涯を終えたい。婆や…私は…不思議と寂しくありません。どうか見ていてくださいませ…私はこの「成人の儀」を立派にやり遂げて見せます。


ふと、焚き火の向かい側に人の気配を感じた。私は一瞬三白眼でそちらを見つめた後、ゆっくりと顔をあげてそこを見た。そこには軽装の村人が私を見つめていた。辺りが暗いため顔はわからなかったが、男性であったのは理解できた。時間…なのだろう。私はゆっくりと立ち上がり眼を軽く閉じた。そして恐らくはこれから向かうであろう社を胸中で思い、そこで始まるであろう行為に思いを廻らせる。眼を開き、私は大きく息を吸い込む。「成人の儀」という名の輪姦は今、正に始まろうとしている。「…行きましょう」私の震えた声が夜に溶けた。


テーマ: 自作連載小説

ジャンル: 小説・文学

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