07 // 1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31. // 09

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

[edit]

trackback: -- | comment: --

Alive In My Heart (5)  

 前線を経験し、あれから一ヶ月が経っても戦況に変化は無かった。どちらが勝っているのか、どちらが負けているのか。いや、それどころかこの戦争は本当に終わるのだろうか。毎日繰り返される日々に安息はなく、衛生テントを本拠にする医療班すらも前線に駆り出される始末だった。終わりのない日々を繰り返して、私は銃を撃ち続けている。もう戦死した戦友、レイモンドのことを思い出さないように───。


「おいクライド、お前異動が決まったそうじゃないか」
「えっ…?」
「惚けるなよ…ってまさか聞いてないわけじゃないだろう?」
「いや…私は初耳だ…」
上層部の兵力分散の方針により、私は前線の狙撃部隊に異動が決まったのだとレイモンドは言った。
「しかしどうして急に?」
「おいおいクライド…俺に聞くなよ。直接隊長に確かめに行ったらどうだ。」
「それもそうだな…」
私はレイモンドに礼を言い、分隊長の元に真偽を確かめにいくことにした。レイモンドの話によれば彼はそのまま前線の歩兵部隊で、私だけが引き抜かれたとの事だった。真偽を確かめるべく簡易式テントの薄手の扉を開けて、隊長の待機するテントへと歩く私の足取りはどこか重く、ぬかるんだ泥の地面にそのままめり込んでしまうかと錯覚してしまう。あまり遠くない場所にある隊長のテントはどこか重たい雰囲気を醸し出していた。私は隊長のテントの前で遠慮がちに入り口から声をかけると、テントの中から低い声が私の声に答えた。間違いなく隊長の声だ。私は一言「失礼します」と言った後に入り口をそっと開けた。
 数時間後、隊長の話を聞き、レイモンドの話が本当だったと気付かされた頃には、もう夕日がすっかり野営テントを茜色に染めていた。私は溜息を一つ吐き、薄く白い色をしたと吐息を見つめる。戦場では出会いと別れが交差していることを、旧部隊の仲間が死んだときに理解していたものの、私は今まで戦場で実感しなかった感情を感じていた。遠ざかる夕日を見ながら、私はこれから別々の部隊となるレイモンドのことが…何となく気がかりだった。今になって思えばこの頃に感じていた焦燥感はレイモンドとの永遠の別れを予感させていたのだろうか。
 だからレイモンドが戦死したと聞かされたとき、私は別段驚くこともなかった。何となく感じていた…あの予感は的中したのだ。ただただ…それだけを感じていた。それ以外を考えることを脳が拒否していたのかもしれない。新しく入った狙撃部隊の隊長から、「彼は前線で敵の弾丸に撃たれた」と聞いたときから「ああ。また最初と同じさ、ひとりで酒を飲み、苛立つ日々に戻るだけ」そうやって自分を誤魔化しながら、スコープを覗き何人もの兵士を撃った。撃って撃って、銃を撃つこの衝撃でこんな記憶も吹き飛んでしまえば良いと、一人。また一人。身体を弾丸で貫いていった。
 しかし、ジワジワと失ったものの大きさにも私は気付き始めていた。「ああ、もう部隊の仲間とは仲良くなど出来ない。これ以上…大切な仲間を失いたくない…こんなに苦しむくらいならばいっそ交流を持たない方がマシだ…」何人もの兵士を撃ち続けながら、そう思い始めたときから…私は部隊で孤立し始めていた。いや、本望だ。親睦を深めた仲間が死ぬのは…もう見たくなかった。

テーマ: 自作連載小説

ジャンル: 小説・文学

[edit]

« 電子の海と伝書鳩  |  赤きドラクルと躍動する16ビット »

この記事に対するコメント

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://noizirou.blog112.fc2.com/tb.php/195-c4d16209
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。