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黒の奴隷服 

 驚いた。正直冗談半分で彼女の話を聞いていた僕には、目の前の状況が理解できない。まさか黒猫が彼女の言うとおりのものを持ってくるなんて誰が信じられようか。彼女が一言「タイヤ」だの「お寿司」だのと言うだけで、一言鳴いた黒猫が十五分も経たずに命令したものを持ってくるのだ。常軌を逸した行動だ…黒猫も、彼女も。どういうことなのか全く理解できない。
「これで信じたかい?」
「にゃー」
少女と黒猫が僕見て「どうだ」と言わんばかりの表情をしている。僕は首を縦に振らざるを得なかった。それにしても何なんだこの黒猫は、少女の命令を聞くや、すぐに路地裏に飛び込み、数分後には数匹の猫を引き連れて望みの品を持ってくる。猫のネットワークはメールなんかより早いんじゃないだろうか。
 少女は黒猫と話をしているようだが、どうにも僕には理解できないことだ。世の中は狭いようで広いのだなあ。感慨にふけっていると、ふと少女が僕を見ていることに気がついた。
「さあ約束だよ」
「にゃー」
…忘れていた。この少女は僕にゲームを持ちかけていたんだった。「現代人の君、私とゲームをしよう!今からすることに君が驚いたり関心をしなかったら私がなんでもひとつ願いをかなえてやろう!ただし!それを守れなかった場合は君は私の言う事を何でも聞くってゲームだ!」と言われていた、ああ。今さら思い出したよ。
 瞬間、閃光が走った。少女がドンドン大きくなっていくように見える。どういうことだ。
「うわあ、たすけてくれ!」
僕はそう叫んだつもりだった。でも声は聞こえず、猫の声だけが木霊した。怖くなって僕は眼を閉じる。暗闇がこんなに落ち着くものだと思わなかった。
「じゃあ、今度は今日から君が彼女のゲームに付き合う番だ」
ふと上から男の人の声が聞こえた。恐る恐る眼を開けて声のするほうを見ると黒いスーツを着た細身の男性が僕にそう告げた。意味がわからない。僕は助けを求めるべく彼に叫んだ。
「にゃー!」
背筋が凍った。僕は自分の手を見つめる。肉のついた丸い腕。黒い毛が身体を覆っている。そして、世界がとても大きく感じる。ああ…なんてことだ。僕は猫にされてしまったのか。
「彼女は、ああやってゲームを持ちかけては猫のペットをコロコロ変えているんだ。僕も最初は戸惑ったものだけど、意外と猫の生活も悪くないよ。頑張ることだね」
ふざけるな。なにが猫の生活だ。
「それじゃあ、僕の後は君に任せるよ。あのゲームはね、3ヶ月に1回あの少女が行う行事でね…あの子は魔法使いなんだ。いやー、僕も猫の社会に適応するまでに5年もかかっちゃったよ。はっはっは。」
なんだ…と言う事は、僕はあの子のゲームを手伝わなきゃ人間に戻れないっていうのか。ふざけるな。ふざけるな。ふざけるな。
 夕暮れにスーツを着た男が笑顔なのは、なにも仕事が終えて嬉しいから、というわけだけでもなさそうです。スーツは奴隷服、そしてそれを脱ぐことは様々な労働や束縛からの解放なのです。

テーマ: ショートショート

ジャンル: 小説・文学

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