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Alive in my heart (7) 

 夜。まだ陽の光が届かない暗闇の中で月だけが淡く私達を照らす。私がボニーの手を引き自軍のキャンプを走って飛び出して森の中に入る頃には、彼女は小さく息を切らせていた。それに気がついた私は慌てて歩幅を彼女に合わせると、少しだけ肩で呼吸をするボニーの瞳にはもう涙は溢れていなかった。手をつないだまま歩く軍服を着た私と、白い看護服を身にまとう彼女。その風貌はどこかアンバランスで、星が輝く森の中でどうにもそれを滑稽と感じて私は口角を少し上げるのだった。音の聞こえない夜道を二人で歩き続けると、暗闇に張り付いた星や月がどこかへ流れていくような錯覚をしてしまう。私はボニーの手を離さぬように握ると、彼女もまた、それに答えてくれた。
 月下に揺れる草花を踏み、白い花の揺れる花畑へ辿り着いた頃。辺りの景色は薄い夜明けを演出し、月も有明の月となって、ただ静かに揺れていた。
「ここは…?」
ボニーが細い声で私に問いかける。
「あいつが…」
「あいつ…?」
「レイモンドが俺に教えてくれた場所だ。」
そこは「白い光」と言う言葉が一番似合う花畑、レイモンドが生前に教えてくれた白い花が咲き乱れる花畑だった。
「レイモンドさんが…?」
「ああ、綺麗だろう…朝になる少し前が一番花が美しく見えるんだとさ…」
涼やかな風が花畑を過ぎ去っていくと私達の頬を撫で、空へ消えていく。ボニーは花畑にゆっくりと近づいてしゃがみこみ花に触れ始めた。
「Une belle fleur…素敵ね…」
「ん…?」
「っ…素敵な場所ね。」
「ああ…そうだな。」
ボニーはしゃがみこんだまま徐に花を摘み始めた。見えているか…レイモンド。私はお前にいつも何かを与えられてばかりだったな……すまない。ここにはもう来ないつもりだったが…レイモンド、私はお前を思い出す事を…もう恐れない。さよならだレイモンド。悲しみに暮れるのは私だけでは無かった…いつかそっちで会おうじゃないか。その時は私から酒に誘うさ…ありがとう…レイモンド。白い光が花畑一面を照らしていく。夜明けはもう目の前に近づいている。
 その後。私は白い花で髪飾りを編むボニーと花畑でひとしきり話をした後、彼女と一緒にベースキャンプへ戻っていった。起床の時間にはまだ十分時間があり、私と彼女は微笑みを交わしながら岐路に着いた。ボニーを衛生キャンプまで送り届けた後、私は欠伸をひとつして、自分の部屋に戻ろうとしたとき…彼女に呼び止められた。
「クライドさん…写真をとらない?」
「写真?」
「ええ…ダメかしら…」
彼女が躊躇いがちにそう尋ねる。
「いや、構わないよ」
断る理由は無い。私は彼女を強引に連れ出したのだから、それくらい容易いものだ。
「そ…それじゃあ…少し待っていて!」
彼女は笑顔でそう言うと衛生テントの中に入っていった。程なくしてカメラを持ったボニーがテントから出てくる。
「それとね…これを…」
もう片方の手には先程作った白い花の髪飾りが握られていた。
「これを頭につけて…一緒に写真を撮って欲しいの…」
頬を染めてそう言う彼女に、私は胸が高鳴った。彼女の眼を見て話が出来ない。私は無言で大きく頷いて彼女の横に立つ。三脚にカメラを立てたボニーが私の横で髪飾りをつけている。手渡されたもう一つの髪飾りを遠慮がちに私が頭につけると、彼女は「結婚式みたいだね」と微笑んだ。やや緊張気味に彼女の横でシャッターが切られるのを待つと、セルフタイマーのセットをし終わった彼女と私はお互いに笑い合った。幸せだと…この戦場で初めて私は感じた。

テーマ: 自作連載小説

ジャンル: 小説・文学

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